エロス断想

猫と美人を描いてゐます

蹴りたい背中

晴れのち曇り
コロの散歩途中に猫をマッサージしてたら、お気に入りの老猫が必死に寄って来る。もう大分ヨタッてゐて、足元もおぼつかない。マッサージしてもらひたいんだねぇ・・・もみもみ


綿矢りさ(1984-)「蹴りたい背中」読了。文庫とは言へ、今時380円とは破格なり。非常に興味深く読む。前作「インストール」は流し読みして何も残らなかったのだが、今作はなかなか濃密。相当推敲したに違ひなく、適度にポエティックな文体。数年前、学校帰りの女子中学生が「蹴りたい背中」の単行本を熟読しながら歩いてゐるのを見た。漫画なら解る。小学生から大学生まで、漫画を読みながら家路につく・・・ごくありふれた光景だが、小説を読みながら歩いてゐる子を見たのは後にも前にもあれっ切り。思ふに綿矢は、かなりあざとい作家だ。三島の「禁色」を想起した。現代の読者の求めてゐるものを書けるプロの作家。ただし、この作品を「孤独な女子高生の焦燥」とか「いぢめ」とか「ほろ苦い青春」を描いたものとして読むのは、あまりにも皮相的。ひとことで言へば「思春期の狂気」・・・校内で銃を乱射する、アメリカの高校生たちと紙一重の世界。若いのに大したものだ。芥川賞に値する作品
さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないやうに、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。気怠げに見せてくれたりもするしね




■三州生桑HP■
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