エロス断想

猫と美人を描いてゐます

アドルフに告ぐ

コンスタン「アドルフ」読了
読むのは二度目なり
恐ろしき恋の破滅
愚かで純粋な女、エレノール
弱く卑怯な男、アドルフ


誰でも恋をする
しかし本物の恋とは、選ばれた者だけが味はふことのできる狂気だ
本物の恋をした者でなければ、この小説の恐ろしさを理解できない
恋などしない方が幸せだらうか?


以下抜粋
§
「恋の魅力よ、誰がお前を描くことができよう?」
「私たちはむやみやたらに愛撫し合ひ、愛を語り合った。だが、ほかの話をするのが怖くて愛を語り合ってゐたのである」
「激怒も、不当な仕打ちも、あるいは浮気でさへも、元通りに繕へる。だが、隠し事だけは、愛の中に一つの異質の要素を投げ入れ、この要素は愛を、愛自身の見てゐる前で、変質させ、色あせたものにしてしまふ」
「彼女にとってあれほどまでに必要な愛情を、彼女が疑ってゐるやうに見える時には、私は悲しかった。また彼女がそれを信じてゐるらしい時にも、悲しかった」
「あなたは愛情を持ってゐるやうに思ひこんでいらっしゃるけれど、本当はお情けなのよ」
「この愛こそはまた、私のすべての不幸の原因ではなかったらうか?」
「二人の間には、不治の痛手を、それでもしばらくは癒してくれるやうに見える、あのひとときの愛情の返り咲きすらなかった」
「ああ! と彼女は叫んだ。どうして希望を返して下さったの? すぐまた奪はれてしまふといふのに」
「愛は、わたしの命のすべてだったわ。でもあなたの命ではあり得なかったのね」
「世界全体が、お前はもう永久に愛されなくなるのだぞ、と言ってゐるやうだった」
§
正字・正假名使ひの爲のアンテナ」といふものに、この「エロス断想」が引っかかるやうだ
http://a.hatena.ne.jp/funaki_naoto/
私は、歴史的かな遣ひで詩文を書く
正しいと思ふし、美しいと思ふし、私には読みやすく書きやすいからだ
正字(本字)も使ひたいのだけれど、現状では全ての漢字を正字にするのは不可能
一時期「超漢字」を使ってゐたが、あれでも完全ではない
それに、中高生には読みづらいだらう
ゆゑに、私は、WEB上では漢字は略字、かな遣ひは歴史的かな遣ひで書く
漢詩を半紙に清書する時、俳句を短冊に書く時は、正字で書きますけどね


■三州生桑HP■
http://www.h4.dion.ne.jp/~utabook/