エロス断想

猫と美人を描いてゐます

奇妙な季節

秋晴れつづく、空いっぱいに広がるうろこ雲


ジャン=マルク・ロベール(1954- 仏)「奇妙な季節」読了
佳作。仕事に熱中する男が妻も友人も失ってしまふ・・・といふプロットはよくあるが、主人公を仕事人間に仕立て上げてゆく、得体の知れない社長の不気味なキャラクターが秀逸。このキャラクターのおかげで、単なる小説が深みのある寓話になってゐる。
いつまでも私に未練を残さないで。私はもう出て行ったのだから。私の愛は終はりました。あなたに不幸になってほしくないのです。私を取り戻さうとしないでください。時間の無駄になるだらうし、きっと仕事も失ふでせう。たぶんそんなことは、あなたに許されてゐないのだから。私は別の人生を知りたいのです。あなたがもう、誰でもなくなってしまっただけなのです。さやうなら。




ひととせの恋深まりぬ風の秋
秋涼しくしゃみ一つに恋一つ
しめやかな恋の秋なり風の色
秋めくやあなたこなたに恋ざかり
ひややかに揺るる女のまつ毛かな
あだ惚れの夢や身にしむ星あかり
さて君もさびしからずや秋の暮





薔薇水晶

気がつくと微笑んでゐました
笑ひ方を忘れてゐたのに
気がつくと微笑んでゐたのです

ああ!
薔薇水晶が降ってくる!

朦朧とした春の空から
薔薇水晶が降ってくる!

薔薇水晶の結晶が
あなたとわたしに降りかかり・・・

気がつくと微笑んでゐました
笑ふつもりもなかったのに
気がつくと微笑んでゐたのです

あなたもご覧になったのですね
薔薇水晶の魔法を

これは私とあなたの
二人だけの秘密です




■三州生桑HP■
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