エロス断想

猫と美人を描いてゐます

Never let me go

終日曇天、風寒し


カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』読了。興味深し。訳もよし。ものスゴく奇妙な青春小説? 残酷な運命のもとに生まれた子供たちは、絶対的弱者のアレゴリーか。例へば『スラムドッグ$ミリオネア』の孤児のやうな…
いづれイシグロはノーベル文学賞を獲るだらうが、日本人としてではなくイギリス人として授与されるんだらうなぁ
§
「あの日、あなたが踊ってゐるのを見たとき、わたしには別のものが見えたのですよ。新しい世界が足早ににやってくる。科学が発達して、効率もいい。古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。そこにこの少女がゐた。目を固く閉ぢて、胸に古い世界をしっかり抱きかかへてゐる。心の中では消えつつある世界だとわかってゐるのに、それを抱きしめて、離さないで、離さないでと懇願してゐる。わたしはそれを見たのです」
§

美人図、鉛筆、色鉛筆

子猫図、鉛筆