エロス断想

猫と美人を描いてゐます

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晴れたり曇ったり、暖かし。もう雪は降らないかな

川上弘美センセイの鞄』読了。さすがに文体が整ってゐる
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突然扉が開いた。部屋の中から満ちあふれてくる光に、わたしは目を閉ぢた。「ツキコさん、そんなところに立ってないで、いらっしゃい」センセイが手招きした。目を開けると、すぐに目は光に慣れた。センセイは何やら書きものをしてゐたらしい。卓に紙が散らばってゐる。何を書いてらしたんですか、と聞くと、センセイは一枚の紙を卓からとりあげ、わたしに見せた。「蛸の身のほのかに紅し」と紙には書いてある。まじまじと眺めてゐると、センセイは、「句の、下五がなかなかできません」と言った。「ほのかに紅し、の後に何を置いたらいいのやら」わたしはざぶとんにぺたりと腰をおろした。わたしがセンセイのことを思って悶々としてゐた間、センセイは蛸のことなぞで悶々としてゐたのである。
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野良猫図、鉛筆

美人画、鉛筆、色鉛筆