エロス断想

猫と美人を描いてゐます

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どんより曇天、底冷えする一日


図書館に寄りて六冊借る
古井由吉『蜩の声』
栗山良八郎『捨てたもんぢゃないね、日本人』
黄文雄『日本人が知らない日本人の遺産』
師田幸夫『神田鶴八鮨ばなし』
『猫生活2010/7』
『CLASSY.2011/11』
女性誌を借りては見たものの、描いてみたいモデルが一人も載ってないのはどうしたことか
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人が死んでただちに生まれかはっても五十代近くも隔たる大昔の声のことにしても、近代の人間はおしなべて、耳の聡かったはずの古代の人間にくらべれば、論理的になったその分、耳が悪くなってゐるのではないか、すぐれた音楽を産み出したのも、じつは耳の塞がれかけた苦しみからではなかったか、とそんなことまで思ったものだが、この夜、昼の工事の音と夜更けの蒸し返しのために鈍磨の極みに至ったこの耳に、ひょっとしたら、往古の声がやうやく聞こえてきたのか、と感じられて耳を遠くへやると、窓の外からけたたましく、蜩の声が立った。夜半に街灯の明るさに欺かれてか、いきなり嗚咽を洩らすやうに鳴き出し、すぐに間違ひに気がついたらしく、ふた声と立てなかった。狂って笑ひ出したやうにも聞こえた。声に異臭を思った。
古井由吉『蜩の声』
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猫図、鉛筆

美人画、鉛筆、色鉛筆