エロス断想

猫と美人を描いてゐます

しのもみ

快晴、風あり
早や四月も今週で終はり…

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太兵衛は石盗人の疑ひが掛かって、幕府の手で召し捕られた。問へば知らぬと云ふ。そこで拷問せられた。初めは石を抱かせられた。次に篠揉といふことをせられた。宮本武蔵といふ書にかう書いてある。「篠揉とは管竹の小口を薄くくりぬき、これを膝におしあてて揉む時は、小口の竹へ肉入る、その肉の入りたる竹を引きぬく時、膝に小孔を生ず、この孔に沸騰せる醤油を注入して責むるものなり」と云ふのである。太兵衛は獄丁の篠揉を手ぬるしとして、竹をわが手に渡させ、自ら揉んで、自ら醤油を注いだ。孔よりは肉出でて山桃の実のごとくになった。都甲の家では今に到るまで山桃を食はぬさうである。
森鴎外『都甲太兵衛』
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「篠揉シノモミ」といふ言葉は、広辞苑にも平凡社の大辞典にも載ってなかった


美人図、鉛筆、色鉛筆、1時間


『三州生桑詩画集猫のパンセ』
■三州生桑HP■