エロス断想

猫と美人を描いてゐます

美人三句

曇りのち快晴、強風、砂塵飛散す


美人三句
珊瑚色の勝負服なり鎌田友里
春の色を自由自在に縫ミチヨ
春は何処青山未奈の微笑みに


山下恒夫『大黒屋光太夫』読了。下手な冒険小説より遥かに面白い。事実は小説より奇なり珍なり摩訶不思議なり。興味深かったのは、光太夫が一匹の猫を船に乗せてゐたことだ。鼠よけでもあるまいから、恐らくはペットだったのだらう。何とこの猫は、八ヶ月に及ぶ漂流と四年以上の孤島生活に耐へ、カムチャッカで世話になった人に贈られたといふ。人々は争って猫が欲しいと申し出たらしいが、当時のロシアには猫はゐなかったのだらうか。かういふことは教科書には載らないからね…。一行十七人のうち、帰国できたのは二人。以下の抜粋は、光太夫と庄蔵の別れの場面。庄蔵は凍傷で片足を切り落とし、ロシアに帰化したので日本には帰れなかった…
いつまでも惜しむとも尽きせぬ名残りなれば、心弱くては叶はじと、かの邦の習ひなれば、つと寄りて口を吸ひ、思ひ切りて駆け出せば、庄蔵は叶はぬ足にて立ち上がり、こけまろび、大声をあげ、小児に如く泣き叫び、悶えこがれける。道のほどしばしのうちは、その声、耳に残りて、腸ハラワタを断つばかりにおぼえける。『北槎聞略』


美人図、和紙、鉛筆、赤鉛筆、50分



『三州生桑詩画集猫のパンセ』
■三州生桑HP■