エロス断想

猫と美人を描いてゐます

有事

薄曇り、あたたかし
宅急便は無事に届いた模様


子供の頃から、東海大地震が来るだの、関東大震災が再来するだのと叫ばれたものだったが、まさか私の生きてゐるうちに、阪神淡路大震災より大きな地震が来るとは…
あちらこちらで募金箱を見かける。スーパーなどでは、入り口ごとに募金箱を置いてゐる。そんなにたくさんは募金できません…


このやうな有事に、芸術ほど役に立たないものはない。詩や絵画は、衣食足りた豊かな時代の余剰物にすぎないか…?
しかしまた、有事の際にこそ、芸術家ほど強固な個人主義者はゐないと確認でき、芸術の本質的な恐ろしさを知ることもできるのではないか
さきの大戦中、三島は遺書として『中世』を書き、川端は防空壕の中で『源氏物語』を読みふけり、谷崎は発表するあてのない『細雪』を黙々と書き綴ってゐた…毎日毎日、数千、数万人の同朋たちが戦死してゐたといふのに! 彼らは単なる非国民なのか?
有事であれ、平時であれ、芸術を必要とする人は必要とするし、必要としない人は必要としない。芸術家は役には立たないかも知れないが、このやうな時に必ず現れる、募金詐欺をする連中よりは無害であらう
そして、俳句の一句、絵の一枚、或いは歌や映画が、荒廃した人心に染み入ることもあるだらう

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「芸術は運命である。一度モチーフに絡まれたが最後、捨てようにも捨てられないのである」岡本かの子
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美人画、鉛筆


■三州生桑HP■
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