エロス断想

猫と美人を描いてゐます

中世

快晴、微風、汗ぱむ
ルームミラーで後続車をフト見たら、四人の若い女性が乗ってゐて、四人とも煙草をフカしてゐた。類は友を呼ぶとはこのことなり。信号が赤になったので停まると、ものスゴい勢ひで私の車を抜かし、信号無視で交差点に突っ込んで行った。ああいふマナーを知らない女性を見ると、或る人を思ひ出してイヤな気分になる


街なかで、キャメルのコートを着てゐる女性を見ると、或る美しい女性を思ひ出す。もしくは、ピンク色のふわふわとしたセーター…学生時代のキラキラとした思ひ出
ギターケースを抱へてゐる少年を見て、私のことを思ひ出してくれる女性がゐるだらうか…?
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三島由紀夫『中世』読了。恐るべき言語世界。優れた作家は、たかが言葉でこの世とはまったく別の世界をつくり上げることができる。それはほとんど詩人である

鄭阿はかの不死の薬の調合書を見た日から心は悩みに晴れず、いたく思ひ煩うた。亀はあれは老公おん自らではあるまいか。沈澱し、堆積し、悼み、ふるへ、しらじらと白昼の焔のごとくもえ、愛し、夢想し、歎きに爛れ、打ちひしがれ、物言はぬその魂。中世の体現者。中世といふ巨きな重たい磊落たる果実の、蝕まれた核。鄭阿も亦老公と等しく彼の亀を愛して居った。老公と同じやうに鄭阿も亦、かの見えざる都を見てゐた。それは風のごとく人の心に襲ひかかる。それは峰々にひらめく稲妻の如くである。
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美人画、鉛筆、色鉛筆、1時間
可愛いデスネ

■三州生桑HP■
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