エロス断想

猫と美人を描いてゐます

美しさと哀しみと

曇り、昼頃小雨


川端康成『美しさと哀しみと』読了。佳作。珍しく女性の同性愛を描いてゐる。谷崎の『卍』の影響があるかも知れぬ。川端文学のキーワードは、【処女】と【噛む】と【汗】であらうか

けい子は隣りの床からの人目など、まったく気にかけないで、音子の小指を噛む歯に力を入れた。その小指の痛さが、音子の腹にまで走った。しかし音子は指をひかないでだまってゐた。小指のさきにけい子の舌が動いた。けい子は小指を口から出して言った。「ちっともしょっぱくないわ。先生、お湯におはひりになったから…」
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その昔、作家たちには特色があった。鴎外には士族の誇りが、漱石にはユーモアが、芥川は衒学的、鏡花は怪奇、太宰は自己否定、谷崎はマゾヒズム、三島は華族趣味…そして川端にはエロスがあった
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セックスをするだけなら豚でもできるが、真剣な恋には知性が不可欠だ。豚は常に発情するが、決して心中はしないし、ラブレターも書かない
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頬杖をつく美人、鉛筆、20分



■三州生桑HP■
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