エロス断想

猫と美人を描いてゐます

夢を与へる

朝地面は濡れてゐたが、日中は晴れ。少し冷える

クローズアップ、鉛筆、30分


綿矢りさ『夢を与える』読了
芸能界を丁寧に取材したセミドキュメンタリとして読めば凡作だと思ふが、主人公の最後のセリフを発狂の暗示と解釈すれば、救ひやうのない悲劇にして傑作である。少女の絶望的な孤独を描いた恐ろしい小説か? いづれにせよ、主人公のアイドル子役は、アイドル小説家である作者自身の投影である部分が大きい。以下の抜粋は、作者自身の叫びであらう
「下積みが長かった人、この仕事が好きでたまらない人はやはり根気強いし、長年のキャリアや勉強熱心さで光る演技をするから、夕子の演技はどう見ても負けてゐる。母親の言ふとほり恵まれてゐるせゐなのだらう、熱意に欠けてゐる。しかし世間の人は努力家の彼らではなく夕子を選び、夕子ばかり、テレビで見たいと言ふ。世間の人々が自分に何を求めてゐるのか、夕子にはいつまで経っても分からなかった」



■三州生桑HP■
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