エロス断想

猫と美人を描いてゐます

ヒッチ俳句

カラ梅雨つづく、真夏日カラカラ、突き刺すやうなUV、好風
今日から庭に庭師が入る


野良猫の様子を見に公園に行った折り、思ひがけないことあり
猫の姿はなく、ガッカリして駐車場に戻ると、男が一人フラフラと近づいてきた。気味が悪かったので無視してゐると、さらに近寄って来る。ジロリとニラむと、ぐっしょりと汗に濡れた、坊主頭で肥り気味の若い男が、無表情でボーッと立ってゐた。二十代前半か
「ああ・・・うう・・・」彼は、自分の手のひらに何か必死に書いてゐる。聾唖者だった・・・少し知的障害もあるらしい。私はあわててペンとメモ帳を渡したが、如何せん字が読みづらい。地名らしき文字を書いたので、カタカナで書き直して確認すると、激しくうなづいてゐる。「ここに帰りたいのですか?」又うなづく
私は困った顔をしたと思ふ。私が帰る先とは逆方向の知らない町だし、結構距離がある・・・その町のどこで降ろせばいいのか?
しばらく悩んでゐると、彼は腕を胸の前でクロスさせる。ダメなのか? と聞いてゐるのだらう。「交番に行きませんか?」と書くと、フラフラと歩き出してしまった
駐車場にたむろする人たちに彼は近づいて行ったが、ことごとく無視されてゐる。声をかけようにも、声が出ないのだからしやうがない。それに何と言っても、彼は健常者とは少し異なった風貌をしてゐる・・・
私は、しばし反省した。最近私は縁あって、障害児関係の本を少しづつ読み漁ってゐる。「本を読むだけではダメだ・・・何かちょっとしたことでいいから行動を起さねば」・・・いつも、さう思ってゐたのではなかったか?
後部座席を片づけて、車を出す。彼は、もう駐車場を出て一般道を歩き始めてゐる・・・フラフラしてたのは、脱水症状になりかけてゐたからかも知れない。彼に追ひつくと、メモ帳を彼に見せる。「○○のあたりに着いたら、家は分かりますか?」彼は、また激しくうなづき、後部座席に乗り込んでくる・・・さして嬉しさうにも見えないのは、感情表現が苦手なせゐだらう
私の全然知らない細い道を、彼は後ろから誘導する・・・「ああ・・・うう・・・」といふ声と、手を使って右に左にまっすぐに。我が街に、あんな海水浴場があったとは知らなんだ。どれだけ走ったか・・・彼は、とある住宅地で車を停めさせる。「ここでいいの?」「うう! うう!」メーターを見ると、何と6.5キロ! この炎天下を帽子もかぶらずに歩いてきたのか・・・往復も覚悟して? ひょっとしたら、何か思ふところがあって痩せたかったのかも知れないね
彼がどこかの家に入るまで見届けたかったが、いつまでたっても立ち去らないので車を出す。彼は私の車が見えなくなるまで、ずっと見送ってくれてゐた。それが彼なりの感情表現だったのだらう
袖振り合ふも多生の縁
唖の指すままに行くなり炎天下



網タイツの女、灰色画用紙に鉛筆、パステル、木炭鉛筆、時間をかけたわりには不出来・・・それにつけても、ダイソーの画用紙の描きにくさよ。6枚105円なり。パステル専用紙は1枚100円弱・・・紙を選ばずに描けるやうにならなくちゃね




■釈三州HP■
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