エロス断想

猫と美人を描いてゐます

川柳

早朝小雨、晴れたり曇ったり、強風吹く、春二番なり
エサをやるまでは野良猫グチを聞き
ひとりきり猫を抱いてもひとりきり


下山弘「川柳のエロティシズム」読了。江戸川柳の差別表現に驚く。恐らくは、江戸っ子たちは、その刹那主義ゆゑに弱者を徹底的に嫌ったのであらう
野暮。それは洒落を解せず、万事敏捷でなく、恋の口説が下手で、しかも欲望は人一倍強いといふまったく鼻持ちならない連中だ。かういふ連中を馬鹿にすればするほど作者の粋なり通なりが引き立つのである。しかしまた、これほど血道をあげるといふことは、作者自身も粋や通がなかなか思ひ通りに実現できないといふ実情に根差すコンプレックスの表はれでもあり、さうした息づかひを読むのも文芸の楽しみの一つといふものである。


「おちゃっぴい」の句が可愛かったので四句ほど抜粋す
『おちゃっぴゐあいはこうやに御座りやす』秀句なり。「あい」は「はい」、つまり承諾の返事。男から「アイと言ってくれ」と口説かれた娘は「そんなに藍が欲しいなら紺屋に行けば?」とすまし顔
『よしねへと前を合せるおちゃっぴい』男に着物の裾をサッとまくられて、「やめてよ」と裾を合はせるおてんば娘
『おちゃっぴい少しまくってあかんべい』
『おちゃっぴいばかばかばかとにげて行き』



「堕胎川柳」アップ。かなりcynicなり




■三州生桑HP■
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