エロス断想

猫と美人を描いてゐます

蜜のあはれ

終日好天、ぬくし、ジョギング中汗かく
某駐車場にて、私の横に停まった車の中のカップルがイチャイチャし始めたので逃げる。メイワクなり。なぜ人が乗ってる車に横付けするかな・・・いくらでも空いてるのに。恋は盲目か
数年前、同様に停まった車の中で、いきなりセックスを始められたことがある
あのカップルは完全に露出狂であった・・・急発進で逃げましたがね
畜生メ、しげりやがれ!


室生犀星「蜜のあはれ」読了。老作家と金魚の会話体小説。金魚なのに、池から自由に出て来て、歯医者に行ったり、電車に乗ったり、お金を要求したり・・・ファンタジーと言ふか、シュールと言ふか。犀星の美少女に対する妄念の結晶。七十歳でこんなものを書くとは本物である。ここに描かれる老いた男の性の哀れさ、滑稽さは、谷崎の「鍵」「瘋癲老人日記」に通ずる
「一たい金魚のお臀って何処にあるのかね」「あるわよ、附根からちょっと上の方なのよ」「ちっとも美しくないぢゃないか、すぼっとしてゐるだけだね」「金魚はお腹が派手だから、お臀のかはりになるのよ」「さうかい、人間では一等お臀といふものが美しいんだよ、お臀に夕栄えがあたってそれがだんだんに消えてゆく景色なんて、とても世界ぢゅうをさがして見ても、そんな温和しい不滅の景色はないな、人はそのために人も殺すし自殺もするんだが、全くお臀のうへには、いつだって生き物は一疋もゐないし、草一本だって生えてゐない穏やかさだからね、僕の友人がね、あのお臀の上で首を縊りたいといふやつがゐたが、全く死場所ではああいふつるつるてんの、ゴクラクみたいな処はないね」



併せて、犀星の絶筆の詩「老いたるえびのうた」を載せる。詩人と生まれたからには、かういふ優れた辞世の詩を詠んでから死にたいものだ

『老いたるえびのうた』室生犀星
けふはえびのやうに悲しい
角やらひげやら
とげやら一杯生やしてゐるが
どれが悲しがってゐるのか判らない。

ひげにたづねて見れば
おれではないといふ。
尖ったとげに聞いて見たら
わしでもないといふ。
それでは一体誰が悲しがってゐるのか
誰に聞いてみても
さっぱり判らない。

生きてたたみを這うてゐるえせえび一疋
からだぢうが悲しいのだ。

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山下石榴を見失ってしまった・・・
いかにも残念



■三州生桑HP■
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