エロス断想

猫と美人を描いてゐます

硝子戸の中

曇り時々晴れ
犬を殴ってゐる人を見る。気鬱なり


公園にて、側溝に落ちてゐた子猫を助ける。この側溝は大きく、深さも幅も1メートル以上あるが、幸ひ、水深は3センチほどだった。子猫は手のひらサイズで、恐らくは生後1、2週間。残暑とは言へ、夜間、早朝はかなり冷える。人間の大人でも、この流水に一晩つかってゐれば、体力をかなり消耗するだらう。
側溝に降り立ち、ニーニー鳴いてる子猫に近寄ると、母猫がすっ飛んできた。子猫を抱いて地面に置く。体がプルプル震へてゐる。レトルトフードを鼻先に置いてみたが、さすがに食べない。それは母猫がペロリと平らげた。どこからか、子猫がもう2匹出てきて母猫に付いて行く。1匹は元気さう、もう1匹は片目、私が助けたトロい子猫もノタノタと這って行く・・・。
うそ寒き水に子猫はにじむなり
うそ寒き水ににじめる子猫かな


夏目漱石硝子戸の中(ウチ)」拾ひ読み。死の前年に書かれた随筆集。何度読み返しても良い
今の私は馬鹿で人に騙されるか、あるいは疑ひ深くて人を容れる事ができないか、この両方だけしかないやうな気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちてゐる。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだらう。





■三州生桑HP■
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