エロス断想

猫と美人を描いてゐます

芥川の恋文

薄曇り
祖母の法事、五七日なり。若い坊さんだった。声がまだ小さい。私のオナカの鳴る音の方が大きかった



芥川龍之介の書簡集を拾ひ読み。のちに妻となる塚本文へ宛てたラブレターが興味深い。少し長いけれど抜粋す。しかし、現代女性はこんな手紙をもらっても感動しないのではあるまいか。芥川は自分のことしか考へてゐない。挙句に自殺してしまふのだから・・・
・・・僕のやってゐる商売は、今の日本で一番金にならない商売です。その上、僕自身もろくに金はありません。ですから、生活の程度から云へば、いつまでたっても知れたものです。それでよければ来て下さい。僕は文ちゃんが好きです。それだけでよければ来て下さい
・・・苦しい時は一緒に苦しみませう。その代り楽しい時は二人で一緒に楽しみませう。下等な成金になるより、上等な貧乏人になった方がいいでせう
・・・僕には僕の仕事があります。それも楽な仕事ではありません。その仕事の為には随分つらい目や苦しい目にあふ事だらうと思ってゐます。しかし、どんな目にあっても、文ちゃんさへ僕と一緒にゐてくれれば僕は決して負けないと思ってゐます。何だか気になるから聞きます。本当に僕を愛してくれますか
・・・お互に利巧ぶらず、えらがらず、静かに幸福にくらして行きませう。さうする事が出来たら、人間としてどの位高等だかわかりません。どうせ貧乏人だから、ろくな暮しは出来ませんよ。よござんすか
・・・文ちゃん以外の人と幸福に暮す事が出来ようなぞとは、元より夢にも思ってはゐません。僕に力を与へ、僕の生活を愉快にする人があるとすれば、それはただ文ちゃんだけです。僕は文ちゃんを愛してゐます。文ちゃんも僕を愛して下さい
・・・文ちゃんは何も出来なくっていいのですよ。今のまんまでいいのですよ。赤ん坊のやうでお出でなさい。それが何よりいいのです。二人の赤ん坊のやうに生きて行きませう
・・・文ちゃんは御婚礼の荷物と一緒に持って来なければならないものがあります。それは僕の手紙です。僕も文ちゃんの手紙を一束にして持ってゐます。あれを二つ一緒にして何かに入れていつまでも二人で大事にしておきませう。だから忘れずに持っていらっしゃい・・・





■三州生桑HP■
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