エロス断想

猫と美人を描いてゐます

The Box man

快晴、時折り薄曇り。この春一番の蒸し暑さ。春とは言っても五日は立夏ですけどね。
夕刻、祖母を見舞ふ。いびきをかいて寝てゐた。気持ちよささうに寝てゐた


安部公房(1924-1993)「箱男」読了。興味深いんだけど・・・。どうして安部公房がニガテなのか、自分でもよく分からない。「砂の女」も傑作だとは思ふのだけれど、他の作品を読みたいとは思はない。ナンセンスに徹し切れなかったのではないか。百輭や足穂や森茉莉、或いはガルシア=マルケス、ドノソのやうな、極上のナンセンスに。
彼女はすでに、肩の傷口から出た空気銃の弾や、不器用に切りそろへた髪の形などから、ぼくが変装を脱いだ箱男であることを見抜いてゐたはずである。しかしぼくの眼は、ついその不自然さを見過した。保護者の寛容さで、彼女の傷口を舐めまはしてゐるやうな気持ちでゐた。さういふ時には、眼から唾が出る。他人に毀される前に、自分の手で毀してやらうと、つい気負ひ込んでしまふのだ。上下の瞼には歯が生える。彼女を齧る妄想で、ぼくの眼球は火照り、勃起してしまふのだ。


愛は無償
見返りを求めるな



■三州生桑HP■
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