エロス断想

猫と美人を描いてゐます

リビアの小さな赤い実

快晴、爽快な一日


ヒシャーム・マタール「リビアの小さな赤い実(原題・IN THE COUNTRY OF MEN)」読了
新味は無いが、非常に興味深い作品。作者はアメリカ生まれのリビア育ち、両親はリビア人。父親はリビア政府に拉致され、いまだに生死不明なのだとか。カダフィ大佐独裁政権下の市民生活とイスラム文化(特に女性の人権無視の結婚)を少年の目線で描く。「密告」「拷問」「公開処刑」は軍事国家のシンボル。タイトルの「赤い実」は熟した桑の実(マルベリー)のこと
「ほら、パパ、桑の実だよ。この世で一番美味しい食べ物だよ」僕は実を一つつまむと、パパの腫れ上がった唇の中に押し込んだ。パパはあごを二、三度動かしただけで、すぐに実を手の中に吐き出した。「嫌ひなの?」パパは実を地面に捨てると、服で手をぬぐひ、指でこめかみの小さな丸いやけどの跡をさして、「連中はタバコの火をここで消したんだ」と言った。僕はうつむいて、捨てられた桑の実をぢっと見た。



八方ふさがりだ。手のうちやうがない
私の自尊心はズタズタだ・・・



間違ってゐたのか?




■三州生桑HP■
http://www.h4.dion.ne.jp/~utabook/