エロス断想

猫と美人を描いてゐます

夜のみだらな鳥

チリ人作家ドノソ「夜のみだらな鳥」読み進める
妄想と幻覚に満ちた悪夢のやうな長編小説
読み終へる頃には気が狂ってゐるかも知れない
「おい、婆さんたち。おれの体をしっかり包んでくれ。熱で震へないやうに、ようく包んでくれ。腕も手も、脚もその先も、動かせないやうにしてくれ。急ぐんだ。体中を縫ってくれ。熱っぽい唇だけぢゃない。目もだ。とくに目を頼む。その力をまぶたの奥深くに閉ぢこめてくれ、もう見えないやうに。あの男に二度と見つからないやうに。おれの目が闇の中で、暗い空虚の中で、その力を失ってしまふやうに。さうだ。おれのまぶたを縫ひふさいでくれ」


本屋にて、ギャンブル系の雑誌の多さに驚嘆す
パチンコも競馬もしないので読んだことないのだけれど、週刊誌、月刊誌合はせて60冊ぐらゐズラリと並んでゐた
これに匹敵する雑誌は、女性向けファッション誌と漫画雑誌、そしてエロ本だけだらう
文芸誌など微々たるものだ
現代日本の出版事情を端的に現してゐる
こんな時代にチリ人作家の本を読んでる私って一体・・・


ショッピングセンターのベンチに若いカップルが座ってゐる
男はうっとりとした様子で目を閉ぢ、頭を女の胸にもたせかけてゐた
女は男の髪の毛を撫でてゐる
通り過ぎざまに、女と私の目が合ふと、彼女は困ったやうに微笑んだ
男は何も知らないまま
男はいつも何も知らないままなのだ




■三州生桑HP■
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