エロス断想

猫と美人を描いてゐます

サビ猫曰く

サビ猫曰く
「もっと遊んでよ! どうしてスグ帰るの? ホラ、尻尾に触ってよ!」
黒猫
「猫嫌ひな奴もゐるからな。目立っちゃいけねえってことさ」
白猫
「私はベタベタされたくないから、構はないけど」
キジ猫
「モグモグモグモグ・・・」
青猫
「いつも同じカリカリばっかり」
茶虎猫
「贅沢言っちゃいけない」
灰猫
「半生フードにしてくれると有り難いんぢゃが」
目ヤニ猫
「詩人に金無し」
三毛猫
「おやまあ三州先生、先日は子猫を丁重に弔ってくださって」
目ヤニ猫
「先生と呼ばれるほどの・・・」
片目猫
「否!」
彼は吐き捨てるやうに言ひ放ちました。
「人間のすることなんざデタラメだ! 俺はこれっぽっちも信用しちゃゐねえぞ!」
野良猫たちは、私の顔色をうかがひます。
「でも、僕は君のことが一番好きなんだよ」
鋭い片目でギロリと私を睨みつけるこの猫は、誇り高く、気品があり、本当に美しい猫なのです。

猫山に夕闇が迫ってきました。
私が立ち上がると、野良猫たちは何事も無かったかのやうに、一斉に毛づくろひをし始めます。

厳しい冬が、すぐそこまで来てゐます。