エロス断想

猫と美人を描いてゐます

美少年神(一)

少年を拾った。とても美しい少年を。
走り梅雨のしめやかな雨がそぼ降る深更、少年は街燈の下に胎児のやうに丸くなって寝転んでゐた。暗色のセーターもジーンズもスニーカーも、ぐっしょりと重たげに濡れてゐる。
具合が悪いのかと声を掛けると、むくりと起き上がってうつむいてゐる。私はその横顔を見て、年端もゆかぬ少女だと思った。何といふ色の白さ! 細い首と滑らかな頬が、自づから発光してゐるやうだった。
「行く所がないの? 僕の部屋は、この近くだから来る?」
彼は素直にうなづいた。額に垂れる髪と、憂ひ帯びた長い睫毛から、雨粒が滴り落ちる。
名前を訊くと、アンリと応へた。その声で少年と分った。